ハナビラダカラ(6)
和歌山県・串本の貝

真野 進
(2002.10.14)

和歌山県のハナビラダカラは、以前潮岬南部の貝について測定を行った。しかし、潮岬の貝は極端に小さく、特殊な個体群と思われたこと、また双方とも測定に用いた個体数が少なかった事もありデータとして物足りなさがあり今回の測定を行った。

方法

結果及び考察

写真1:大きな個体と小さな個体。
一番丸い個体。

p02写真2:色変わり

飴色がかった個体(左)から白い個体(右)までバリエーションが見られる。石垣島、徳之島に比べて白い個体が多い。

p03写真3:奇形 freak

何らかの原因で左右の殻の成長が狂った個体。

p05写真4:石灰藻

タカラガイの背中に異物が付着する例はしばしば見られるが、和歌山では特に多い様に思われる。これら、暖海性のタカラガイにとって黒潮の接岸と冬の水温低下のバランスが影響していると考えられる。

写真5: 断面

写真左の個体を横に切断。
背の部分は、内層の青い部分と表層の白い部分に分かれる。

辺縁は、厚く成貝層が沈着している。

写真6: 断面拡大図

写真左は辺縁部の拡大図。
右は背の部分の拡大図。
何れも層を形成していることが分かる。
また、右の写真の右側にはハナビラダカラの橙色のリング部の切断面が見られる。これにより、このリングは表層に近いところに形成されていることが分かる。

測定した結果

個体数
(N)
殻高(L)mm 伸長度(L/W) 扁平度(H/W) 歯数(Teeth) young
(%)
Mean   SD Max Min Mean   SD Mean   SD 内唇(C) 外唇(L)
93 23.1 ± 2.21 29.1 17.8 1.39 ± 0.067 0.71 ± 0.025 11.5 12.7

0

殻長 :
(size)
殻長は、最大29.1mm、最小147.8mm、平均23.1mm、標準偏差2.21であった。今回のサンプルの分布図はかなり正規分布に近い形となっている。
この平均値は、今までの測定の中で最大となった。
伸長度:
(L/W)
伸長度 最小1.24、 最大1.56、平均1.39、標準偏差0.067であった。
扁平度:
(H/W)
最小0.66、最大0.80、平均0.71、標準偏差0.025であった。
内唇歯:
(columellar teeth)
最少 10個、最多 14個、平均 11.5個であった。
外唇歯:
(labral teeth)
最少 11個、最多 15個、平均 12.7個であった。

あとがき
  今回の和歌山・串本ではヤクシマダカラ、ハナビラダカラなど三浦、房総には数が少ない種類が非常に多く棲息していることに改めて驚きました。緯度では僅か2度ほどしか違いませんが、黒潮が接岸し豊かな海を保っているのでしょう。その一方、今回のレポートに写真を載せましたが、背に石灰藻を巻き込んだ個体も数多く見られました。ヤクシマダカラでは、フジツボ付き、海藻を巻き込んだ個体が多く見られます。このようなことは徳之島では見ることが出来ませんでした。その原因は、マクロとミクロに在るのではないかと考えています。乃ち、マクロとしてみれば、串本付近は黒潮により暖かな海ですが、各海岸をミクロに見れば冬季短期的に水温の低下が起こる場合があり、外套膜も広げられず他の生物の付着を防げなくなるが、死滅するところまでは行かないと言うものです。
 たった一回の観察で、結論めいたことは言えませんが余り不思議だったので此処に備忘録として書き残します。
皆さんのご意見も、お聞かせいただければ幸です。