チャイロキヌタ(1)
三浦半島・三戸ー黒崎

真野 進
(00.11.29)

 チャイロキヌタは、房総、男鹿半島以南、沖縄、台湾まで(コレクション大図鑑)とかなり狭い範囲に分布する茶色の美しいタカラガイである。もし、その大きさがクチグロキヌタとかクロユリダカラ位あったら日本四名宝とまで行かなくても、もっと世界中のコレクターから注目されるだろうにと惜しまれる。海に落ちた、ドングリか椎の実の様な風情がある。
「潮騒ガイドブック」によれば、以前はもっと普通に見られたが、最近は激減しているとのことである。しかし、三浦半島の海岸を歩くと、メダカラに次いで多く拾うことが出来る。
今回は、メダカラと同様、基本的な形態について調査した。

方法
  採集日  2000年11月22日 くもり 中潮
  採集地   三浦市三戸海岸漁港裏から黒崎まで
  採集法   浜に打ち上げられた貝を拾う。
  測定法  サイズ ノギスにて最小単位0.1mmまで測定(0.1mm以下四捨五入)。
  測定項目 殻高(size): 前端から後端までの長さ
       殻径(width):内唇側と外唇側の最大幅
       背高(hight):腹面から背までの高さ
       外唇歯数:末端襞(teminal ridge)も含めカウント
       内唇歯数:末端襞(teminal ridge)も含めカウント
       伸長度(elongate):殻高/殻径
       扁平度(depressed):背高/殻径

結果及び考察
  表に測定結果を示す。

1.色、模様 
    写真1に比較的摩耗の少ない10個体の背面、腹面の写真を示す。
写真1

   背には濃い茶色の帯が三本、やや斜めに走っている。チャイロキヌタは近縁のカミスジダカラと混じって採取され、特に打上で磨れた貝は同定が難しいと言われるので注意深く観察したが、カミスジダカラは1個体も無かった。

2.歯の数
外唇側17-19、内唇側15-18個、平均で内唇歯17個、外唇歯18個であった。メダカラに較べ歯数がやや多く、細かいと言える。但し、メダカラ(1)でも同様であったが歯のカウントはなかなか難しく、かなりの測定誤差があり、大体の傾向値と見るべきであろう。

3.サイズ

  殻高  最小10.6mm、最大18.0mm、平均14.4mmで三浦半島での記録10-22mm (潮騒ガイドブック ?)の範囲内にある。メダカラよりはやや小振りといえる。尚、Lorenzの"A Guide to Worldwide Cowry"のSize Rangeは11-23mmとなっている。 写真2に最大と最小個体を示す。
写真2

   

伸長度  最大1.77、最小1.54、平均1.66でメダカラとほぼ同じ値であるが、標準偏差が0.051と、やや大きかった。写真3に 最大と最小個体を示す。
写真3

   

扁平度  最大0.86、最小0.77、平均0.81であった。こちらもメダカラより標準偏差が0.017とやや大きかった。写真4に 最大と最小個体を示す。
写真4

4.未成貝について
    表中に"Y"と示した個体は、螺塔の状態、外唇の歯の発達、殻底の滑層の沈着状態から比較的若いと思われるもので、100個体中20個体を数えた。
チャイロキヌタが1年に1回産卵し、1年で成長し、寿命が5年で、毎年20%ずつ死ぬと仮定すれば、この割合は頷ける。しかし、貝は多くの卵を産み、若い内の減耗が高いと思われること、成長し、螺塔が滑層に埋もれるまでにどの位の日数が掛かるかが不明のためこれ以上の推測は出来ない。
写真5に幼貝と、未成貝を示す。

写真5

あとがき
  自分で海岸に行き採集し始めたのは今月に入ってからです。小さな貝を探して、首と腰を痛くしながら吹きさらしの海岸を歩き回っていると、「俺は何をしているんだろう」思うことがしばしばです。しかし、比較的新鮮な貝や、少ないと言われる種類の貝を見つけたときは嬉しくて誰かに話しかけたくなります。でも、冬の海岸は人が少ないですよね。
タカラガイを集め始めたのは、今年の5月頃ですが、購入したのはほとんど1種類、1個体で、それが種の代表と思っていました。しかし、自分で採集してみると同じ種でも大きさ、形状、模様に変化があり、今までとは全く違ったタカラガイの世界が見えてきたように感じます。
これからも、ホカロンを腰に付けて海岸をさまよい歩くことでしょう。