チャイロキヌタ(11)
定点観測 その1

真野 進
(2003.01.14.)

 三浦半島の海岸で繁殖しているチャイロキヌタ、メダカラのような種類では浮遊幼生の参入も少しはあると思われるが、同一海岸では遺伝的には共通した個体群と考えられる。其処で、長期に渡る継続的測定で、もしもこれら個体群の平均殻長に変化が見られるとすればそれは主として栄養、水温等環境の影響と考えられる。反対に変化が無ければ殻長は遺伝的に支配されているか、棲息環境が一定に保たれているかのどちらかであろう。このような考え方から、毎月一回、一年間の定点観測をすることとした。又、同時にメダカラでも同様の観測を行いこの遺伝的には全く異なる両者の変化を見ることにより、環境の影響を探る事とする。
 荒崎はその海岸の形状から打上殻の拾える場所が極端に狭く、サンプリング誤差を防ぎやすいと考え測定地点とした。
 今回は、その1として、3ヶ月間のデータを示す。
方法    
  採集地(Location) 三浦半島、荒崎
  採集法 打上貝を拾う。(Beached)
特に1月は目に付いた貝を全部拾った。
  測定法・測定項目  

結果及び考察

 測定結果

     

採集日
(Date)

個体数
(N)

殻高(L)mm

伸長度(L/W)

扁平度(H/W)

亜成貝
(%)

Mean

±

SD

Max

Min

Mean

±

SD

Mean

±

SD

2002.10.04

211

15.3

±

1.62

19.9

11.4

1.67

±

0.054

0.81

±

0.017

10

2002.11.24

145

15.4

±

1.63

20.6

12.0

1.67

±

0.048

0.81

±

0.019

3

2003.01.07

475

15.3

±

1.66

20.4

11.1

1.67

±

0.050

0.81

±

0.017

5

1.殻長(L)
size
平均殻長は10月-15.3mm、11月-15.4mm、1月-15.3mmと0.1mmしか差が無かった。これは測定誤差の範囲である。
下の分布図を見ると10月の11mmの1個体、11月の21mmの1個体が平均の差に影響していることが分かる。

殻長分布図:

2002.10.04

殻長分布図:

2002.11.24

殻長分布図:

2003.01.07
2.伸長度(W/L) elongate 平均値は三月とも1.67と全く同じ値を示した。
3.扁平度(H/W)
 depressed
平均値は三月とも0.81と全く同じ値を示した。
4.亜成貝%
young shells
亜成貝の割合は10月で10%と高く、11月に3%と激減した。これは今年生まれた幼貝が10月から11月に掛けて成熟した結果とも見られるが、1月に5%と増えている事から、亜成貝の判定の曖昧さも影響している可能性がある。

あとがき
 三浦半島で宝貝を採集するようになって二年が経過しましたが、同種でも海岸が違うと大きさも違うことに興味を覚え殻長などの測定を繰り返してきました。結果、ほんの2−3kmしか離れていない海岸でも驚くほど大きさが違う場合がありその原因が何なのかを知りたいと思うようになりました。
 勿論知識もなく、設備機材もなく、お金もないというないないづくしの中での調査ですので結果は余り期待は出来ませんが、取りあえず定点観測を一年間継続してみたいと思います。