チャイロキヌタ(2)
三浦半島・大浦海岸付近

真野 進
(2001.02.27.)

メダカラについては、相模湾側の海岸産より、東京湾口側の海岸産の方が、大きいことが確かめられたが、それがなぜなのか、メダカラに限ったことなのか疑問が残った。そこで、メダカラの次に、数が拾えるチャイロキヌタで、海岸による違いを見ることとした。

方法

結果及び考察

 測定結果

1.サイズ
 
殻高  最大21.1mm、最小12.5mm、平均16.7mm、標準偏差1.90であった。三戸産と比較すると、最大個体は、3.1mm、最小個体が1.9mm大きく、平均で2.3mm大きかった。写真1に最大(No.4)と最小(No.73)個体を示す。

写真1

2.伸長度  最大1.78、最小1.56、平均1.68、標準偏差0.054であった。三戸産と比較すると、最大、最小共、0.01大きかった。写真2に 最大(No.40)と最小(No.78)個体を示す。違いが分かり易いように同じサイズに修正した。

写真2

3.扁平度 最大0.84、最小0.74、平均0.80、標準偏差0.017であった。
写真3に 最大(No.6)と最小(No.44)の個体を示す。違いが分かり易いように同じ幅に修正した。

写真3

4.歯の数 内唇歯数は、13-19個(平均16.4個)、外唇歯数は、15-20個(平均17.4個)であった。三戸産では、全数につき数えていないので正確ではないが、大浦産の方が内、外共歯数が少ないようである。
5.未成貝 未成貝のカウントを試みたが、連続的な変化であり(写真4)、どこからどこまでを未成貝とするか基準が出来ず断念した。殻の横断面を見ると、老成化により滑層が厚くなっていることが良くわかる。

写真4



6.カミスジダカラ カミスジダカラが混じっていないかと、注意深く調べたが、髪すじ状のパターンがかすかに見られる個体が幾つか見つかった(写真5)。しかし、これらも濃い茶色と、明瞭な横斑を持つチャイロキヌタの特徴を示し、カミスジダカラとは異なっている。チャイロキヌタにも、かすかな髪すじ模様を持つ個体があると考えるのが妥当と思われた。
写真5

あとがき
 金田湾では、チャイロキヌタが少なく、たまにしか拾えないので、大浦海岸付近のものを調べました。結果は上の通り、メダカラと同様、東京湾口側の方が大きいようです。貝の大きさには、遺伝、幼貝時代の餌、水温等が影響すると考えられます。しかし、高水温は、ハナマルユキ(3)でも触れたように、必ずしも大型化につながらないようです。では、遺伝なのでしょうか、幼貝時代の栄養なのでしょうか?
 また、はらぐろきぬたさんの、チャイロキヌタ情報にも有る通り、チャイロキヌタと、カミスジダカラの問題は、なかなか面白いテーマのようです。最近出版された、日本近海産貝類図鑑の232頁には、この二つの貝の生態写真が載っていて、それから見ると、外套膜の繊毛の形状がやや異なるようです。でも、この外套膜の違いについての研究がなされているかどうか、不明のため確かとは言えません。比較は無理にしても、チャイロキヌタについては是非、生態観察をしてみたいものと考えております。