ハナマルユキ(16)
成長と産卵

真野 進
(2006.07.01.)

前3報【ハナマルユキ(7)、ハナマルユキ(8)、ハナマルユキ(13)】でハナマルユキを水槽飼育し、その食性、殻の成長を観察したが飼育期間は最長でも3ヶ月にとどまった。この原因は死亡した個体の解剖所見から、充分な餌が摂取出来なかったことが推察された。そこで、2003年11月より6匹の幼貝を採集し再度飼育を試みた。

供試個体と飼育日数

個体No.

産地

採集日

死亡日

飼育日数

2003-01

荒崎

2003.11.23.

2003.12.14.

21日間

2003-02

荒崎

2003.11.23.

2004.11.18.

360日間

2003-03

荒崎

2003.11.23.

2004.02.15.

84日間

2003-04

黒崎

2003.11.24.

2004.12.11.

383日間

2003-05

黒崎

2003.11.24.

2004.10.06.

316日間

2003-06

黒崎

2003.12.08.

2004.06.25.

199日間

飼育法

前報と同じく、30cm水槽(約8リットル)で自然海水にて飼育。水は10日に一度程度、2リットルづつ交換した。ヒーターは25℃では冬期間少し高すぎると思われたため、可変ヒーターで20℃に設定した。
 餌は、海藻(アオサ)、ナミイソカイメンを給与した。

従来は採ってきたアオサは冷凍保存し、少量づつ給与していたが、1月、試みに石に付いたまま入れてみた所、写真のように驚くべき食欲を見せて採食した。
これは石に固定したアオサの方が、細断給与したものより食べやすい事によるものと考えられた。この発見以降出来る限り石に付いたままのアオサを与えるようにした。

 

 

 

 

 

殻の成長

測定日\個体No

2003-01

2003-02

2003-03

2003-04

2003-05

2003-06

12月1日

32.6

27.8

29.8

24.5

24.9

  

1月1日

 

28.8

31.6

25.3

26.7

28.3

2月1日

 

29.8

31.9

27.8

26.9

28.7

3月1日

 

30.8

 

28.7

27.1

29.1

4月1日

 

31.8

 

29.8

27.8

29.7

5月1日

 

32.2

 

30.1

28.1

30.0

5月30日

 

32.5

 

30.3

28.6

30.3

7月2日

 

33.2

 

30.5

29.4

 

8月1日

 

33.2

 

30.5

29.4

 

9月1日

 

33.2

 

30.5

29.7

 

10月1日

 

33.2

 

30.5

29.8

 

死殻長

32.7

33.1

31.9

30.5

29.8

30.7

上表、左図のようにほぼ1ヶ月間隔で測定を続けた。6月以降は成長もほぼ止まり、限定成長を裏付ける結果となった。
2003-01、2003-03の個体は前回と同じく早期に死亡した。

 

 

 

 

殻の形態変化

2003-02

12月1日撮影


8月1日撮影
2003-04
12月1日撮影

8月1日撮影
2003-05
12月1日撮影

8月1日撮影
2003-06
1月1日撮影

5月30日撮影

3月には成貝の形に変化し、8月には左の写真のように完全に成熟した。6月に死亡した2003-06の個体は、5月30日の時点では背の模様に幼さが残っている

200305の個体が産卵を繰り返したのでその状況を記録する。

1回目

5月23日産卵 卵塊の上で体を回し、周辺をなめている。 5月24日卵はなくなり、この後場所を離れる。

飼育下で成長したハナマルユキが、狭い水槽の中で産卵をしたのは驚きであったため、照明をあて多くの写真を撮ったので親が不安を感じ卵嚢を食べてしまったと思われる。

2回目
6月26日卵を産んでいるのを見つける。正確な産卵日は不明だがまだ黄色なので新しいと思われる。
6月28日卵の色が変わってきた。

6月30日卵の色が全体に変わる

7月2日朝5時頃、親は卵塊から離れる。

卵塊を別の容器に取り、ルーペで見ると幼生が卵嚢から煙のようにわき出しているのが見えた。その後、毎日観察を続けたが、7月7日には動いているのを確認できたのは1匹だけとなった。タカラガイ幼生の飼育についての報告は少なく、出来ても10日間程度で着底まで成功した例は無い様である。

3回目

8月6日 夕刻より産卵開始、8月7日 朝には、産卵終了
8月8日(2日目)の様子 8月11日(5日目)卵嚢の色が変わり始め、8月13日(7日目)にはすっかり色が変わる
8月15日(9日目)孵化が始まり、8月16日(10日目)親は場所を離れる。
今回は産卵の開始から10日間で孵化するまでを観察出来た。この時の水温は28度、抱卵中、親は一度も卵塊から離れず、回りながら周辺を舐めていた。このような行動は外敵から守ったり、卵の清掃をしていると考えられている。
上の写真から卵嚢の数を数えると焼く170個くらいで、見えない部分も含めると200個以上かと推定される。

4回目

9月19日午後五時頃より産卵開始、六時半には卵嚢が30以上になる。
9月20日卵嚢の数は約92個。重なりもあり正確には数えられない。
ハナビラダカラでは、ひとつの卵塊の中にある卵嚢の数は233-267、そしてひとつの卵嚢に含まれた卵の数は230-603との報告がある。
今回のハナマルユキでは産卵の都度卵嚢の数は異なり、100〜200個でハナビラダカラの報告よりは少し少ない。種による違いなのか個体による違いなのかは不明である。
この写真を撮影した後、卵を抱いたまま2003-02の個体と交尾しているところが見られた。
一度だけの観察なので不確かだが、ハナマルユキは産卵直後に交尾を行うのかも知れない。
  1. 今回の一連の産卵行動の観察で、
    1. ハナマルユキはふ化後10〜12ヶ月で性成熟を迎える。
    2. 産卵は前回卵塊から離れてから33〜35日であることから孵化に要する10日間を加え43〜45日サイクルでシーズン中何度か行われる。
    3. 産卵は比較的水面に近い所で行われる。
    等が明らかになった。

あとがき

今回初めて飼育下でハナマルユキの産卵行動を観察できたが、これは多くの部分他のタカラガイとも共通するものではないかと考えています。ただ、雌親になるべく刺激を与えないようにとの思いから水槽の洗浄を極端に押さえた結果水質の悪化を招いたのか10月6日にはこの個体は死亡してしまいました。もうすこし長く飼育出来たらもう少し色々なことが分かってきたのかもと残念です。