ハナマルユキ(4)
房総半島の打上貝

真野 進
(2001.03.18.)

方法

結果及び考察

 測定結果

1.サイズ
 
殻高  最大36.8mm、最小20.1mm、平均28.7mm、標準偏差3.12で、潮岬、三浦半島産に較べて小さかった。サンゴ礁の貝類資源【2】タカラガイ類(山口'91-92)によれば、ハナビラダカラ、キイロダカラはその棲息域が北上すると大型化する傾向があるが、ハナマルユキの大きさの地理的及び局所的な変異には一定の説明を加えることは困難であるとされている。今回の結果からは、ハナマルユキは北上による小型化の傾向が見られた。
2.伸長度(W/L) 
elongate
最大1.66、最小1.29、平均1.49、標準偏差0.060で、ほぼ三浦半島産と同じであった。ハナマルユキは、老成に従い側面に滑層の沈着が起こり辺縁が張り出す結果、伸長度が低くなると思われる。その観点から見ると潮岬産が最も老成化が進み、房総、三浦産は若い内に死ぬ確率が高いと言えそうである。
3.扁平度(H/W)
depressed
最大0.85、最小0.66、平均0.77、標準偏差0.038で他の2カ所に較べ一番値が大きかった。この値も辺縁が張り出すと値が小さくなることから、房総でのハナマルユキは他の2カ所に較べ若い内に死ぬ確率が高いと言えそうである。
4.歯数 内唇歯17-12、平均14.2、外唇歯19-14、平均15.7であった。
5.老成化に伴う殻の変化
No. 内唇底面 外唇辺縁 前述のように、ハナマルユキは老成により辺縁が張り出す。このことは、タカラガイ一般に見られる特徴だが、ハナマルユキでは特に強く、英語では"Callus"と表現されている。今回測定に使用した中から、成熟段階が異なると見られる5点を選んで殻厚を測定した。測定個所は、オミナエシダカラと同じく、背、内唇底部、外唇辺縁の3カ所で、測定にはノギスを使った。結果は表のとおりで、成熟に従い劇的に厚さを増していることが確認された。写真1に未成貝から、老成貝までの背、底面、後端、断面を示す。
未成 0.51 0.38 0.56
126 0.86 1.01 1.60
119 1.43 1.78 2.63
102 1.16 1.97 2.99
95 1.64 2.71 4.19

写真1




あとがき
 ハナマルユキの大きさの地理的な変化は、前述の山口先生(琉球大学理学部)の報告にもあるとおりなかなか一筋縄ではいかないようです。ハナマルユキの辺縁の張り出しは、形状的にも、質量的にも波の影響を受けにくくする為でないかと考えられます。とすると、前述の棲息地による伸長度、扁平度の違いは、波の強さの影響の可能性もあります