前報にて、ハナマルユキの老成化に伴う殻の変化を殻の横断面(cross section)を使って観察したが、今回はそれに縦断面(sadital section)、水平断面(horizontal section)を加え、より立体的にその変化を理解しようとした。
| 方法 | サンプル | 前回の、caputserpentis(4)の房総半島の打上殻を使用。 |
| 殻の切断法 | ミニルーターにダイヤモンドビットを装着、カットした。 |
結果及び考察
| Fig. 1 背面図(Dorsal view) 左から右に老成が進んでいる。126、119の個体は所謂ミカドハナマルユキ(caputserpentis mikado Sch. & Sch. 1938)の形態である。背の模様は磨れて生体とは変化している。(写真は前報に同じ) |
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| Fig.2 腹面図(Ventral view) 歯列、殻口の変化と特に外唇側の形態変化が著しい。(写真は前報に同じ) |
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| Fig.3 後方図(Posterior view) 胎殻は中央の個体で見えなくなる。(写真は前報に同じ) |
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| Fig.4 横断面(Cross section) 入江(1997)の報告のように、腹面と辺縁は幼貝層の外部から、背は内部から貝層が発達する様に見える。特にNo.5は幼殻からの左右への張り出しが著しい。(写真は前報に同じ) |
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| Fig.5 水平断面(Horizontal section) 成長に伴う殻の肥厚は貝の全周に渡って起こっている。この為、タカラガイで一般的に言われる限定成長(成熟後は殻長が変わらない)が必ずしも当てはまらない。(1-4とは個体が異なる) |
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| Fig.6 縦断面(Sadital section) 補助線を付けて、幼殻からの後方への殻の発達が見えやすい様にした。(1-5とは個体が異なる) |
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| 年間平均水温と幼殻幅の関係【入江(1997)より作表】 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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あとがき
一般的にタカラガイでは同一種の場合、高緯度では大型になる傾向がありますが、何故かハナマルユキには一定の傾向が見られていません(山口 1991-1992)。まだ例数が少なく結論めいたことは言えませんが、私の調査でもメダカラ、チャイロキヌタと異なる結果となっています。この原因は、ハナマルユキは他のタカラガイと比べ生長による殻厚の増加が著しいことと、この殻厚の増加速度が水温が高いほど速いためと考えられます。すなわち、高緯度地域に棲むハナマルユキは成熟時の幼殻の大きさは低緯度の個体より大きいのですが、その後の殻厚の発達が遅く、結果として高緯度大型説を裏付ける事が出来ないのではないでしょうか。これを実証するには標本の幼殻長の測定と、水温と殻厚の発達速度の測定が必要ですが私にはチト荷が重いようです。ただ、「ハナマルユキ(腹足類:タカラガイ科)における殻の構造の地理的変異と水温の関係」(入江 1997)を読むと日本各地のハナマルユキの幼殻幅と水温の資料があり、上述の考えを強く裏付けているように思われます。