ハナマルユキ(9)
沖縄・石垣島の貝

真野 進
(2002.08.15.)

Lorenzによれば、caputserpentisには、caputserpentis caputserpentisとcaputserpentis caputphidii の二亜種に分類されている。このうちcaputserpentis caputphidiiはマルケサスからハワイに分布し、辺縁の張り出しが弱く、腹面、歯間が彩色されるのを特徴とする。しかし、日本で採集される個体にもこの特徴を持つものが多い。
 今回、石垣島で生貝を多く採集できたので形状測定と同時に、ハワイ産caputserpentis caputphidiiとの比較も行った。

方法

結果及び考察

 測定結果

 

個体数
(N)

殻長(L)mm

伸長度(L/W)

扁平度(H/W)

歯数(Teeth)

Juvenile
(%)
Mean ±

SD
Max Min Mean ±

SD
Mean ±

SD

内唇(C)

外唇(L)
106 29.7 ± 3.25 37.4 21.2

1.35
±

0.059
0.65 ±

0.029

14.3

15.8

1

1.サイズ殻高  最大37.4mm、最小21.2mm、平均29.7mm、標準偏差3.25であった。分布図を見ると正規分布に近い事が分かる。ヤナギシボリ、クチムラサキのように極端に大きい個体が出現する種とは明らかに異なる。

最大個体の写真 通常の形態と異なり、前方の辺縁の張り出しが強い。

2.伸長度 
 最大1.58、最 小1.25、平均1.35、標準偏差0.059であった。
3.扁平度
 最大0.77、最小0.60、平均0.65、標準偏差0.029であった。総合表を見ると、南の個体群の方が値が小さくなる傾向を示している。
4.未成貝 未成貝と思われる個体数をカウントしたが、106個中1個 1%であった。
     1の個体は今回の計測より外した。この個体は三浦半島に見られるハナマルユキ幼貝と同じである。
     2の個体は今回未成貝としてカウントした物で、所謂ミカドタイプと同じ。
     3の個体は写真ではわからないが、内唇側の辺縁が所謂ベントアップを始めている。
5.色彩変異ー1 歯間の着色のない個体。全体の色合いは、茶から黒まで変化がある。

6.色彩変異ー2 歯間の彩色された個体。
 ハワイ産の亜種、ヤセハナマルユキは歯間が彩色されることを大きな特徴としているが、石垣産でも個体によっては同様な特徴が見られる。同様のことは三浦、房総、和歌山産でも見られることから日本産のハナマルユキはcaputserpentis caputphidii とするか、又はcaputserpentis caputphidiiは異名とするか今後の研究が待たれる。

7.歯の数
 内唇歯 12ー17、平均14.3個。外唇歯 13ー18,平均15.8個であった。
8.ヤセハナマルユキ(caputserpentis caputphidii)
下の写真はハワイ産の標本で、亜種のヤセハナマルユキとされる物。a-cはワイキキの海で採集、d-eはカウアイ産の購入品。

あとがき
 ハナマルユキの形状は、南に行くほど辺縁が張り出し、扁平になる傾向が見て取れました。但し、その殻長は必ずしも北方大型説には従っていないようです。
 また、まえまえからハワイ産のヤセハナマルユキ(caputserpentis caputphidii)と、日本産のハナマルユキは同じものではないかと疑っておりました。しかし、打上貝では死後の変化も考慮に入れなければならず本格的な検討には至りませんでした。今回、石垣産の貝を多く採集できたので改めて比較してみましたが、益々その疑いが強まった感じがしています。今後、もう少し各地のサンプルを集めることと、ハワイ産、フィリピン産のサンプル蒐集が必要です。