メダカラ(16)

三浦半島・三戸の生貝

真野 進
(2001.09.16.)

これまでのメダカラの打上貝調査で、海岸毎の大きさの違い、同一海岸での季節変化など興味深いデータが得られた。しかし、生息環境、摂取食物、繁殖、寿命などその生態を知るためには生貝の観察、採集、飼育が必要と考えられる。
今回は、その取りかかりとして三戸海岸の生貝を採取し打上貝との比較を行った。
方法
採集日(Coll. Date) 2001年5月-8月
採集地(Location) 三浦半島(Miura Pen. )、三戸(Mito)-小網代(Koajiro)
採集法 潮間帯にて生貝採取。(Live collected)
測定法・測定項目

結果及び考察

 測定結果

1.サイズ(L)
size
 
三浦半島・三戸-小網代(生貝)最大22.4 mm、最小12.8mm、平均16.6 mm、標準偏差1.90であった。
平均値はメダカラ(13)で報告した同じ三戸の打上貝より0.7mm大きかった。また、左の分布図で見られるように正規分布とは離れているように思われる。これは、生貝採取がメダカラの棲息域全体に平均して行われたのではなく、偏った採取であったことを示していると思われる。
今回の採取に当たって♀が大きく、♂が小さいという、性に因るサイズの違いがあることも推察された。タカラガイにおける殻長の雌雄差については、「サンゴ礁の貝類資源 」(山口'92.)にハナビラダカラでも雌が大きい傾向があることが報告されている。また、M. and F. A. Schilder(HSN 1962)も各種のタカラガイで同様の報告をしている。
2.伸長度(W/L)
elongate
最大1.81、最小1.59、平均1.69、標準偏差0.045であった。
この値は、メダカラ(13)とほぼ同じである。
3.扁平度(H/W)
depressed
最大0.86、最小0.77、平均0.81、標準偏差0.016であった。
この値も、メダカラ(13)とほぼ同じである。
4.歯数
teeth
内唇歯13ー17、平均14.8、外唇歯13ー18、平均15.6個であった。
内唇歯の値は、メダカラ(13)とほぼ同じだが、外唇歯はやや多かった。
5.未成貝
junenile%

py

未成貝と思われる個体数をカウントしたが、107個中1個、1%であった。
5月から8月は、三浦半島のメダカラの産卵期に当たり、この一個は、前年生まれの生長が遅れた個体と思われる。今回の測定からは外したが、5月に上の写真左に示した幼貝も採取された。

6.標準的な斑紋 ps
7.目斑無し(左)と地のソバカス模様が薄く、目斑がはっきりしている(右) pno pha
8.色のバリエーション
9.生態

左:ペアのメダカラ

右:卵を守るメダカラ

あとがき
 メダカラの生貝採取は、初めての経験でした。今回の採集は、潮間帯の岩の窪みで行いました。それにしてもこれだけ小さい貝が外套膜を広げて穴の中にいるのを見つけるのは想像していたよりずっと大変でした。でも、それを続けていると色々のことが分かってきます。三浦半島での産卵時期は6月から8月にピークを迎え、ペアになっている貝が多く、多いときには4−5匹も一つの穴に入っていることがあること、産卵後、雌は卵塊の上で孵化するまで守っていること、産卵から孵化までの日数は正確には判りませんでしてが、1−2週間と云うところでしょうか。また、殻長のところでも触れましたが、雌の方が雄よりも大きい傾向があることも判りました。
 8月の始めから、小さな水槽で2匹のメダカラを飼っていますが、若布など海草の他に海綿も食べることが観察されています。水槽の中は必ずしも自然な状態ではないので、海でも同じ食性とは断定できませんが何でも食べるという事がメダカラの生息数の多さを支えている一つの要因のように感じます。
 メダカラの採集についてご指導いただいた、はらぐろきぬたさんに感謝の意を表します。