前報までに、三浦半島の相模湾側、東京湾口側でメダカラの大きさに差があるが、伸長度、扁平度、内唇歯数、外唇歯数には明確な差がないこと、色には茶系統と黒緑色系統のものがあり、棲息深度による餌の違いが関係していると推測された。
メダカラは紅海、アフリカ東岸からオーストラリア、ハワイと広い範囲に棲息している。産地によりどのような違いがあるのかも興味深い。
今回はフィリピン・サマール島産の標本貝14個を入手したのでこれについて同様に計測した。
| 方法 | ||
| 採集地 | フィリピン、サマール島 | |
| 採集法 | 標本貝の購入 | |
| 測定法・測定項目 |
結果及び考察
今回のサンプル個体の背面(写真1)、腹面(写真2)を示す
| 写真1 |
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| 青灰色の地に茶の斑があり前端と後端にも茶の斑が見られる。三浦半島のものと較べ、明るい灰色が目立つ。 |
| 写真2 |
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| 腹面は白からクリームがかった白で三浦半島産のものと大差はない。但し、三浦半島産の青黒系統の老成貝でよく見られる外唇側の薄橙色の着色は見られない。 |
これら貝の大きさ等について測定した結果を表1に示す。
表1
| No. | 殻高mm | 幅mm | 背高mm | 扁平度 | 伸長度 | 内唇歯数 | 外唇歯数 | 未成貝 |
| 5 | 12.9 | 7.8 | 6.3 | 0.81 | 1.65 | 14 | 14 | |
| 3 | 13.3 | 7.7 | 6.2 | 0.81 | 1.73 | 15 | 15 | |
| 9 | 13.7 | 8.4 | 6.7 | 0.80 | 1.63 | 15 | 15 | |
| 1 | 14.0 | 8.5 | 6.7 | 0.79 | 1.65 | 16 | 16 | ○ |
| 6 | 14.5 | 8.8 | 6.8 | 0.77 | 1.65 | 15 | 14 | |
| 4 | 14.7 | 8.4 | 7.0 | 0.83 | 1.75 | 15 | 15 | |
| 2 | 14.9 | 8.8 | 7.1 | 0.81 | 1.69 | 15 | 15 | |
| 11 | 14.9 | 8.4 | 6.8 | 0.81 | 1.77 | 15 | 15 | |
| 8 | 15.1 | 8.7 | 7.1 | 0.82 | 1.74 | 15 | 15 | |
| 10 | 15.3 | 8.3 | 6.9 | 0.83 | 1.84 | 14 | 16 | |
| 7 | 15.5 | 9.1 | 7.4 | 0.81 | 1.70 | 14 | 13 | |
| 14 | 15.7 | 9.3 | 7.5 | 0.81 | 1.69 | 16 | 15 | |
| 12 | 16.3 | 9.3 | 7.5 | 0.81 | 1.75 | 17 | 15 | |
| 13 | 16.5 | 9.9 | 7.9 | 0.80 | 1.67 | 15 | 16 | |
| 平均 | 14.8 | 8.7 | 7.0 | 0.81 | 1.71 | 15.1 | 14.9 | |
| 標準偏差 | 1.06 | 0.60 | 0.47 | 0.015 | 0.060 | 0.83 | 0.83 | |
| Max | 16.5 | 9.9 | 7.9 | 0.83 | 1.84 | 17 | 16 | |
| Min | 12.9 | 7.7 | 6.2 | 0.77 | 1.63 | 14 | 13 |
| 殻高 : | 最小12.9mm、最大16.5mm、平均14.8mm、標準偏差1.06 で、既報メダカラ(2)よりやや小さい。但し、このサンプルは標本貝として販売されたものであり、必ずしも棲息地域を代表するものでないかも知れない。 |
| 伸長度: | 最小1.63、 最大1.84、平均1.71、標準偏差0.060で、三浦半島産よりもやや細長い(elongate)。 |
| 扁平度: | 最小0.77、最大0.83、平均0.81、標準偏差0.015で、三浦半島産と同じであった。 |
| 内唇歯: | 最少 14個、最多 17個、平均 15.1個で、三浦・金田湾産の平均より0.6個多かった。 |
| 外唇歯: | 最少 13個、最多 16個、平均 14.9個で、三浦・金田湾産の平均より0.5個少なかった。 |
あとがき
gracilis(Gaskoin 1849)は、肥後、後藤のA GUIDE
TO WORLDWIDE COWRIES和名表によれば、「ホンメダカラ」とされ、「メダカラガイ」はgracilis
japonica(Schilder 1931)の和名とされている。しかし、LorenzのChecklistではgracilis
japonicaはgracilisの異名とされている。
Schilderの原典を見ていないのでgracilis japonicaがどのような貝として記載されているか知らないが、japonicaとあるからには日本産のメダカラを他と区別したものであろうかと推測している。亜種とまで行かなくても、せめて重要な変種(Variation
/ Form)として「メダカラガイ」が認知されればと考えている。
そこで、この一連のレポートも題をgracilis全体を指す意味で「メダカラ」とどこにも載っていない和名としている。
今回、フィリピン産のgracilisを調査したが、色と形態がやや細長いと言う違いしか見いだせなかった。色は、三浦半島産でも様々であり、主として餌の種類に影響されるとすると、違いは細長い(elongate)しか残らないことになる。前途多難を予想させる。