ヤナギシボリダカラ(1)
和歌山県・串本の打上貝

真野 進
(2002.04.01)

ヤナギシボリダカラは、日本では房総半島、山口県北部以南に棲息する。又、近海産図鑑では亜種としてツマグロヤナギシボリ(ヤナギシボリモドキ 肥後・後藤)isabella controversa(Gray,1824)も房総半島以南に棲息すると記載されている。しかし、2亜種が同所的に棲息することには疑念もあり、本種については今後の研究が必要と思われる。
今回、和歌山県・串本で打上貝63個を拾うことが出来たので、殻の計測を行った。
方法    
採集地 和歌山県・串本 
採集法 打ち上げ貝
測定法・測定項目  

結果及び考察

写真1 背面

サイズ、形状、色彩、前後端の斑に可成りの個体変異が有る。1,2は円筒状の形状を示し、5,8は卵形。1〜5の前後端斑は黒褐色をしているが、6〜8は明るい橙色である。但し、これらは打上殻と言うこともあり、生貝での追試が必要となる。

写真2 腹面

背面に対応して腹面を示す。歯は細かく、殻口は狭く大きな差は認められないが、曲がり具合には多少の個体差が有る。

写真3 縦断面(Sadital section)
背の盛り上がった個体と円筒状の個体の縦断面を示す。内唇、外唇とも歯は極開口部に限られている。
軸唇窩の中では歯列は消えている。
写真4 横断面(Cross section)
横断面には特に変わった特徴はない。

測定した結果

殻長 :
(size)
殻長は、最大40.2mm、最小22.4mm、平均310.1mm、標準偏差4.00であった。
左図の分布を見ると正規分布とは見えず、2〜3の個体群に分かれているように見える。
伸長度:
(L/W)
伸長度 最小1.59、 最大1.99、平均1.78、標準偏差0.083で、細長い円筒状から楕円までの変化が見られる。
扁平度:
(H/W)
最小0.76、最大0.91、平均0.84、標準偏差0.028であった。
内唇歯:
(columellar teeth)
最少 23個、最多 37個、平均 28.3個であった。
歯は内唇も外唇も細かく、正確にカウントするのが難しかった。
外唇歯:
(labral teeth)
最少 26個、最多 41個、平均 31.5個であった。

あとがき

今年の2月、串本の海岸で63個の打上殻を拾うことが出来ました。クチムラサキと同様、三浦、房総では年間でも数個しか拾えないことから見るとその棲息環境の違いが分かります。
今回の測定で分かったことは、形状、色彩、前後端斑の色は個体による変化が大きいと言うことです。今後個体数を増やすこと、異なる棲息域の群との比較、ハワイのツマグロヤナギシボリとの比較などが欲しいところです。