リュウキュウダカラ(4)
幼生

真野 進
(2008.05.31.)

前回の報告で、本種の産卵について触れましたが、その卵塊、卵嚢の形状が他のタカラガイ種のそれとは些か異なり、どのように解釈して良いのか迷っておりました。
今年3月に再び沖縄を訪れ孵化直前の卵を採集、孵化、幼生を観察することが出来ましたので報告します。

卵塊について

本種の卵塊及び卵嚢については既にタカラガイ生体のコーナーで紹介してありますが、他の種に比べ数が少なくサイズが大きいことが特徴的です。その際卵の大きさを約200ミクロンとしましたが、左の写真を見ると黄色い部分の形状が球から不定形に変化しているのが分かります。
この黄色い部分は卵と云うより卵黄とした方が当たっているように思われます。

成熟卵塊は真っ黒で、他種の成熟卵能より濃い色でした。

幼生(larva)動画

採集した卵塊を持ち帰り容器に入れ替えてみると孵出した幼生が活発に動いていました。
タカラガイ幼生は孵化した直後浮遊期を持つものと浮遊期を持たず直接這い出るものがあると云われていますが、本種はこの2つの特徴を同時に備えているように見えます。

腹足で這い回っている幼生。
外套膜は黒色で白色の突起を持っている。

X型の4枚の繊毛の生えた面盤(velum)を持ち、水中を浮遊する。這い回るときは面盤は触角のそばにたたみ込んでいました。

この面盤も孵出後10日には消失していました。

殻の表面は細かい彫刻が見られ、後端部には卵黄と思われる黄色部分が透けて見えます。
このことから卵黄栄養型の発生をすることが推察されます。

彫刻はウミウサギ科の成貝に一般的ですが、タカラガイも幼生時同じ特徴を持つことはこの両科が近縁で有ることを示唆しているように思えます。

殻の大きさは1ミリ以上もあり、他種の100〜200ミクロンに比べ異常に大きいと言えます。

あとがき
 今回幸運にも成熟した卵塊を採集することが出来、リュウキュウダカラがOsergaad(1950)、田中彌太郎(1980)により報告されたタカラガイのどの種とも異なり極めて特殊な発生をしている知ることが出来ました。残念ながら長期の飼育には失敗しましたが、ブランクトン栄養型では無い様なのでヒョットするともう少し成長するまで飼育が可能ではと期待しています。
今の時点では推測にしか過ぎませんが、幼生がこれだけ大いと幼生期に海流に乗って遠くに拡散することは難しく、極めて限られた地域にしか棲息しないのはこの為かと思っています。

Osergaad, J. M. 1950. Pacific Science,4(2) : 75-115
田中彌太郎 1980. VENUS 36 (4) :117-122